漢方薬を用いる決め手は?

現代医学の病名だけでは漢方薬は決められません

近年は、からだにやさしいということもあって、漢方薬が処方されて服用する方も多いようです。

ただ残念ながら、その人のからだに合った漢方薬を服用しているケースは少ないようです。

それは多くの場合、現代医学の病名や症状だけで安易に漢方薬が選ばれているということと関係があるようです。

同じ病名や症状でも、伝統医学的理論でみると全く違う漢方薬を用いることがしばしばあります。

例えば、不妊症で治療を受けているひとの多くは当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などの当帰という生薬が配合された薬方を処方されているようです。

もちろん当帰は伝統医学でいう血虚(けっきょ)を補う場合に用いるので、あながち間違いではありません。

ただ、伝統医学からみると血虚の原因が脾胃の虚弱による、「血」の製造元に原因がある場合があります。

このケースでは、いくら当帰が含まれる薬方を服用しても、製造元の胃腸にダメージを与えるだけで血虚を改善することはできません。

まず、伝統医学でいう脾胃の虚を人参湯や六君子湯などの人参剤などによって補う必要があります。

あるいは、血虚があって当帰が必要なひとでも、腎虚(じんきょ)がひどく、冷えがあるひとには当帰芍薬散に配合されている芍薬(しゃくやく)でも冷えが悪化してよけいに妊娠しにくくなる場合もあります。

このようなケースでは、陽気を補うような細辛(さいしん)や附子(ぶし)が配合された薬方が必要です。

このように漢方薬を用いて病気の治療を行うには、それぞれの薬草が陰気を補って冷やすのか、陽気を補って温めるのか、というような伝統医学の理論に基づいた選薬が必要です。

漢方薬で効果をあげる決め手は、伝統医学的理論に基づいた治療を行うことにあります。