不妊症について

不妊治療は現代医学との併用でも効果を発揮します

何年も妊娠しないので病院で診てもらったが、大して異常はないと言われたという相談をよく受けます。

このように現代医学的にみて明らかな異常がないのに、不妊症と診断された患者さんを東洋医学ではどのように診るのか。

まず現代医学的にみて異常がない場合でも、東洋医学の「ものさし」で診ると明らかに異常があるひとが多くいます。

それはひとつには体質が関係していることが多いようです。

人にはそれぞれに持って生まれた体質があります。そして、それぞれの体質に合った生活を送っていると理想的なのですが、なかなかそうもいかずに不調を訴えたり、現代医学でも病名が付くような病気になる場合があります。


不妊症の場合も、いろんな体質の延長線上で不妊症になっているケースがありますが、ここでは代表的なものを二つあげます。

まずひとつは、血虚(けっきょ)体質のひとです。血虚については、月経異常のところで述べていますが、簡単にいうと必要なところに血が足りない状態です。

東洋医学では子宮や卵巣などの生殖器を「血室」といいます。それほど血が必要な臓器であるということですが、血虚体質のひとはこの血室で血が不足しているために、それだけで妊娠しにくい体質だといえます。

しかし多くの場合、この体質の人で問題になるのは「冷え」です。

ずっと以前ならともかく、現在、子どもがほしいと願っている人たちの多くは、小さいころから夏は冷房にさらされて生活して来ていると思われます。

この冷房による冷えは、知らないうちに足からそのまま血室がある下腹部に入ります。

また、月経が始まった思春期ころから、服装の関係で冬でも防寒を怠って、足からの冷え込みをまともに受けて育って来ています。

東洋医学的に言ってこの足からの「冷え」はそのまま下腹部に入ります。そして、「血虚プラス冷え」の状態になり妊娠しにくい体質になっているのです。

月経中は必ず下痢になるとか、月経量が少ないとか、月経がダラダラ続くとかの症状がある人のほとんどがこのタイプです。

このような血虚体質の人には、血や陽気を補って、体の中からしっかり温める治療を行う必要があります。


もう一つのタイプは瘀血(おけつ)です。これは身体の内部に滞った悪い血のことで、俗に古血と言ったりします。

血をめぐらすエネルギーとも言える「気」が、何らかの原因で(例えば、風邪やインフルエンザなどの熱病と月経が重なったり、ストレスや冷えなどで)減退して、血の流れが悪くなり、悪い血が滞った状態です。

この体質の人の月経は、経血の色が黒っぽかったり、かたまりを伴うことが多いようです。
また、月経前に便秘がひどくなったり、吹き出物が出たり、頭痛や稀に発熱する人もいます。

一人目は出産したのに、二人目ができないという場合に、出産後の養生が悪く瘀血ができて妊娠しにくくなっているということもあります。

また、病院で卵管の通りが悪いとか、癒着があると言われたり、卵管が詰まっているので体外受精をすすめられる人の中にもこのタイプは多いようです。


そしてまた、対外受精を行っているがなかなか成功しないという原因の一つに、この瘀血が考えられます。

要するに、せっかく受精卵を戻しても瘀血があるため血の巡りが悪く、それをうまく成長させることができないためではないかと考えられます。

この瘀血タイプの人への鍼灸や漢方薬の治療は、滞った悪い血をめぐらすために、「気」を補います。特に血室と言われる部位の陰気を補い、滞った悪い血をめぐらします。


実際、現代医学の最先端の治療を受けている人で、鍼灸や漢方薬を併用して、東洋医学的にみて障害になっている問題を解決することで、良好な結果が得られることがあります。