東洋医学からみた各季節の土用の過ごし方

土用の期間は胃腸をいたわりましょう

立春・立夏・立秋・立冬というように、一年に4回季節が変わる節目がありますが、その前の約18日間をそれぞれの季節の『土用』と呼びます。

例えば、2015年の冬の土用は1月17日から立春の前日2月3日までの18日間です。

古代中国の自然哲学に「陰陽」と、それから派生した「五行」という考え方があります。「土用」とはこの五行説に基づくものです。

それによると、万物の構成要素として木・火・土・金・水(もっかどこんすい)があり、これを季節にあてはめ木=春・火=夏・金=秋・水=冬とし、残った「土」を四つに分け各季節の変わり目約18日間を「土」の支配する季節として「土旺用事」略して「土用」としました。

東洋医学では人間も自然界の一部分であるということから、「陰陽論」や「五行説」の考え方を診断や治療、あるいは日常の養生などにも応用します。


万物の構成要素としての木・火・土・金・水は、人のからだでいうと五臓(肝・心・脾・肺・腎)ということになります。そして土用に関係するのは「脾」ということになります。

木 = 春 = 肝
火 = 夏 = 心
土 = 各季節の土用 = 脾
金 = 秋 = 肺
水 = 冬 = 腎

東洋医学でいう「脾」とは西洋医学の脾臓とイコールではなく、脾はその支配下の胃とともに気・血(きけつ)をつくりだす元締めとしての働きのことを指しています。

簡単に言うと、エネルギーを作って全身に送り届ける働きのことです。

ではなぜ各季節の変わり目の土用に脾が旺盛に働くのか。

例えば冬の土用の場合

冬の厳しい冷え込みからからだを守るために、腎(この腎も西洋医学の腎臓とイコールではありません)が頑張って冷えないようしています。そして土用に入ると、それまで頑張ってきた腎を助けるために、脾が気血を送りエネルギーを補います。

また来る春は、陽気が盛んになり草木が芽吹き、万物が生じる季節です。人のからだも自然界の一部ですから、同じように陽気が盛んになって活動的になります。そのためには肝(これも西洋医学の肝臓とイコールではありません)が重要な働きを担いますが、その前の準備期間に脾は気血を補い手助けをします。

要するに、各季節に頑張って働く各臓を助けるために、季節の変わり目に脾や胃が働いて気血を補うのです。

そういう意味でいうと、夏の土用の丑の日にうなぎを食べるという習慣も、あながち意味がないというわけではありません。

もし、季節の変わり目の土用の頃になるとからだがだるくなったり、あるいは胃腸をこわしたりなど、調子を崩すような人がいたら、それは脾の働きが弱いということです。病院で検査して異常がなくても、東洋医学では治療の対象になります。


各季節を元気に乗りきるためには、季節の変わり目のこの土用の期間は、胃腸に負担をかけるような飲食を避け、脾や胃が十分に働けるように心がけましょう。