更年期障害はなぜ春に悪化することが多いのか
更年期障害は花粉症のように季節が限られた疾患ではありません。
しかし、春になると決まって更年期障害の症状に悩まされたり、悪化するという人がいます。
あるいは、更年期障害というほどではないけど、春になると体がだるく感じたり、頭痛や肩こりがひどくなったり、めまいなどを起こして不調を訴える女性が、他の季節より多いのも事実です。
以前だったら「血の道」と呼ばれていた病気です。
更年期障害は何故春に悪化するのでしょうか? ~ その原因を東洋医学から探ってみます
伝統医学の根幹をなす理論に、古代中国の自然哲学の陰陽論から派生した五行という考え方があります。
それによると、万物の構成要素としての木・火・土・金・水(もっかどこんすい)は、季節や人のからだでいうと次のような関係になります。
木 = 春 = 肝
火 = 夏 = 心
土 = 各季節の土用 = 脾
金 = 秋 = 肺
水 = 冬 = 腎
この五行説で見ると、春は「木火土金水」の木にあたり、人のからだでいうと「肝」が木にあたります。
このように、春に関係するのは肝ということになります。
これらの関係は、ただ形式的に季節と五臓を当てはめたのではなく、それぞれに意味があります。
春は肝の気が盛んになる季節ですが、東洋医学でいう「肝」は現代医学でいう肝臓とイコールではありません。
東洋医学では「肝」は血の貯蔵庫と考えます。
そして貯蔵された血は必要に応じて全身に送られて、からだを動かしたり、頭を働かせたりします。
ですから肝が充実している人は、春になってからだが活動的になって血をたくさん消耗しても、その動きについて行くことができて何の問題も起こりません。
ところが、肝が充実していない人、すなわち血の蓄えが充分でない人(現代医学の貧血とイコールではありません。東洋医学では血虚といいます。)は、自然界の春の動きについて行けずいろんな症状を現します。
特に、肝に関係が深く血を多く必要とする目や筋に現れやすく、目が疲れやすくなって見えにくくなったり、腰痛や肩こり、神経痛などが起こります。
また、血を消耗して少なくなるとイライラして怒りっぽくなり、のぼせてフラフラしたり、偏頭痛や不眠になります。
このように、自然界の春の動きに順応するためには、血の働きがとても重要です。
血が不足しがちな女性が、春になると不調を訴えることが多くなるのはこのためです。
このような患者さんに、血を補う薬草の代表である当帰(とうき)が配合された漢方薬を用いたり、鍼灸治療で血を補うツボを用いて効果があるゆえんです。